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2000年9月号……『AO入試』 塾長/青沼 隆

少子化が進むにつれ、高校入試が目まぐるしく変化していますが、大学入試制度もますます複雑になりつつあります。今や、予備校や出版社の専門家でも、日本の大学の入試制度をすべて把握するのは不可能と言われています。これから大学受験に迎えようとする高校生は、たぶんその第一歩で、あまりに膨大な情報量に圧倒されることかと思います。選択の幅が広がるという点では結構なことかもしれませんが、1つの大学が学部や学科によって、あの手この手のやり方で入学者の募集を行っているのに驚きすら感じます。

AO入試とは………

このような中で、今、AO入試と呼ばれる入試選抜が話題を集めています。このAO入試はもともとはアメリカの大学で行われていたもので、日本では1990年に慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部が最初に導入しました。その後、徐々に浸透して、昨年度ではついに約200の大学がAO入試を実施しました。AOとはアドミッション・オフィス(Admission Office)の略で、直訳すると「入学者の選抜から入学業務全般を担当する専門組織」という意味になります。文字通り解釈すれば、大学の専門スタッフが時間をかけて学生をスカウト・選抜する入試制度ということになりますが、現実の内容は千差万別です。面接、小論文、書類審査、学科試験、体験授業などを、各大学が独自に判断して取捨選択することになっていますが、入学者の「青田刈り」として悪用している大学もあれば、受験生へのカウンセリングなどを付加的して文字通りのAO入試を実施している大学もあります。ただ、学力一辺倒ではなく、コミュニケーション能力や学問に対する意欲や問題意識を重視して選抜しようとする点が、共通して言えることかと思います。

AO入試が柱となる理由

AO入試に対する評価はさまざまです。ただ、確かなことは、これは推薦入試・一般入試に次いで大学入試の3番目の柱になりそうだという点です。理由としていくつかありますが、私なりにまとめますと次の4点かと思います。

まず、第1は、AO入試で入った学生が、大学活性化への起爆剤として期待されている点です。今、ほとんどの大学では学園祭、クラブ・サークル活動、学友会活動などが低調で、参加希望の学生も極端に少なくなっています。このような中で、AO入試で入った元気の良い学生をリーダーとして、大学の活性化を図りたいとする大学側の意向があります。事実、多くの大学関係者は、AO入試を取り入れた結果、予想以上に大学の活性化が図れたと言っています。

第2に、建学の精神と入学した学生のミスマッチの問題があります。これは特に女子大学で問題になっているようですが、ガングロ、茶髪、ピアスなどに象徴される学生が増えたため、いわゆる大学が行おうとする人間教育ができにくくなっている点です。いくら人間教育を標榜しても、学力で選考する以上、これに賛同する学生を集めることはできませ
ん。その結果、大学の意向と入学した学生とのミスマッチは避けがたく、近年これがますます拡大しつつあるそうです。その点、AO入試は事前にじっくりと学生を見極めることができ、また大学の教育目標を説明することもできます。

第3に、2002年(高校は2003年)から実施される文部省の学習指導要領の改訂で、現行の小中高の学習内容がさらに30%カットされる点です。これによって従来のような学力重視のペーパーテストができなくなるという問題があります。従って、大学としては、学力に変わるモノサシとしてAO入試を取り入れていく必要に迫られています。

第4に、「大学の高校化」の問題があります。これまで、一般的には大学は「最終学
歴」と位置づけられてきましたが、今後は「専門的な勉強は大学院で」という流れが加速します。従って、大学はあくまでも出発点で、最終ゴールではなくなります。その意味で学生に問われるのは、どのくらい学力があるかではなくて、どんな可能性があるかという点に重心が変わっていきます。入学選抜においてもこの流れは避けがたいという点です。

AO入試の与える影響

このように考えますと、これは単なる大学入試選抜の変化ではなく、小学・中学・高校での勉強について大きな影響を及ぼすのではないかと思います。恐らく、この問題のキーワードの1つは「大学院」ではないかと思います。これまでは、「大学進学」が子どもの教育において大きな目標となっていましたが、これはそう遠くない将来に崩れるのではないかと思います。(もうすでにそうなっているのかもしれませんが………)

いすれにしましても、子育てにおいて、親の果たす役割が益々拡大しつつあるのを実感します。従来のような単一の尺度ではなく、さまざまな角度から子育てを考えなければならない時代に入ったと思います。

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