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2010年夏-2号……『公立中学校での指導』 塾長/青沼 隆

公立中学校と塾
この夏、足立区教育委員会の委託を受けて、同区の公立中学校で数学の授業を行いました。同区では子どもの学力向上が大きなテーマとなっていて、この解消のために塾を活用しているとのことです。今回は同区内のある中学校で、3年生に対して、5日間にわたり計算の基礎を中心に指導しました。公立中学校と塾の間にはまだまだ大きな壁があります。塾の関係者が公立中学校に出入りする機会は滅多にありません。中学校の現状を知る上でも貴重な機会となりました。

塾と学校は、『勉強を教える』、あるいは、『子どもの成長』を促すという点では同じ目標を持っています。ただ、総論はともかく、各論では大きく異なります。そもそも、学校には強制力があります。子どもは、好む好まざるに拘わらず、学校に通わなければなりません。保護者にも同様の力が及びます(教育の義務についての解釈はいろいろあるようですが)。一方、塾にはそんな強制力は全くありません。あくまでも、子どもを介し、保護者と塾との契約によって教育が成立します。従って、塾では、子どもにさまざまな規制を課すことが可能です。例えば、伸栄学習会ではシャープペンの使用を禁止していますが、公立学校では難しいかと思います。

これらを考えますと、学校の常識は塾の非常識、あるいはその反対に、塾の常識は学校の非常識、という部分がたくさんあるはずです。ということは、これらを読み解いていけば、その延長線上に、塾の使命や強みが再発見できるはずです。こんな問題意識もあり、夏期講習中のもっとも多忙な時期ですが、足立区の依頼を受けることにした次第です。

演習量の確保
実は、授業を始めるに当たって一番危惧したのは、生徒の態度でした。生徒にとっては私は「ヨソ者」です。塾に対して嫌悪感を持っている子どももいる可能性があります。授業を拒否されたり、妨害された場合の対処について、事前にいろいろシミュレーションしました。しかし、これらは、全くの杞憂でした。学校の先生の事前指導もあり、生徒たちは驚くほど、行儀よく授業を受けました。たまに、私語をする生徒もいましたが、塾でいつも行う手法で十分、通用しました。

ただ、指導の限界も感じました。その1つが、「演習」です。長年、講師をやっておりますので、子どもたちに「わかる」授業を行うのはそれなりに自信があります。今回もこの点ついては、まずまずだったと自己評価しています。しかし、「わかる」だけでは、「できる」ようになりません。「できる」ようになるためには、わかった内容を、演習しなければなりません。つまり、問題の解き込みです。この時間が、決定的に不足していました。

学校の授業時間は50分です。この時間では、決められたカリキュラムを消化するのが精一杯で、演習時間を確保することが不可能です。一通りの説明をすると、もう50分が経過してしまいます。これまで、何度も、学校の先生から「演習時間を確保できない」という悩みを聞いてきましたが、今回、これを実感しました。伸栄学習会の中学生の授業時間は120分です。これが如何に贅沢なものであるか、再認識した次第です。

子どもへの強制力
もう1点は、この演習に関係しますが、宿題の管理についてです。学校の授業でも、塾と同様に、毎回、宿題を課しました。量としては、ふだん、私が塾で課している半分くらいです。ですから、さほど、子どもたちに負担になるとは思えません。しかし、この僅かな宿題をやってこない生徒がいました。塾でなら、げんこつの1つ、あるいは居残り、場合によっては、保護者へ連絡をするところです。でも、公立中でこれらを行うことは不可能です。事前研修でも、体罰は厳禁と強く申し渡されていました。

くり返しになりますが、「わかる」だけでは、決して「できる」ようになりません。「できる」ようになるためには、演習は欠かせません。自分の力だけで問題を解かなければ、力は決してつきません。従って、宿題は不可欠です。そもそも、宿題をやらなければ、自分がどの部分に弱点を持っているか把握することすらできません。

ちなみに、担当した生徒全員の事前テストの平均点は50点(100点満点)でした。授業終了後に、同じ内容のテストをしたところ68点だったそうです。成績は一応上がりました。ただ、もし、宿題を徹底できたら、80点にアップしただろうと思います。とても心残りでした。

今回の経験を通じて、塾の強みは「演習」にあること、そして、その背景に、子どもに強制力を行使できることにあることを認識しました。

この夏の終わりには、地元の公立高校で、同様に授業を行う予定です。ここでは、私だけではなく、伸栄学習会の他のスタッフも教壇に立つ予定です。学校から信頼されるのはたいへんありがたいことです。ただ、これを機に、塾の強みについて、再度、学び直したいと考えております。

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