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2019年5月号……『教師冥利………??』 塾長/青沼 隆

もう30年以上も前の話です。私が伸栄学習会を開業したころです。定期試験が間近、中学生に数学や英語を指導していました。「先生、この問題がわかりません」という声を受けて、一生懸命に解き方を教えました。「これは、こうやってこうやる。ほら、こうなるだろう………」。真剣に耳を傾けてくれた子どもが、「わかった!」声を弾ませて、顔もほんのり赤く染めていたように思います。

私も大満足。家に戻っても「いい授業ができた」と、先生冥利に尽きます。ところが、それから数日後、「ほう、どれどれ………」と期待を胸に試験の結果を見ます。そこで愕然。せっかく教えた問題ができていません。その子だけではなく、一生懸命教えた他の子どもも同じです。「わかった!」と言って目を輝かせたはずなのにマルがありません。中には、答えすら書いていない子もいます。

信じられない。でも、教え方が悪かったに違いない。それでは教え方を変えて………、とその後も悪戦苦闘を続けました。しかし、結果は変わりません。子どもたちにいくら教えても、試験で結果を出せるようにはなりませんでした。やがて、気づかされました。
そもそも。やり方が間違っている。

今から考えると当たり前です。愚かなことをしたと後悔しています。でも、今でも新人講師は同じ誤りをします。「先生の仕事は『教えること』だ。教えれば『できる』ようになる。わかったときの子どもの表情の輝きは、先生冥利!」

まったく勘違いです。教えただけでは、子どもは決して「できる」ようになりません。当たり前です。教えただけでできるようになるなら、何の苦労もありません。勉強なんかで苦労する子どもはいなくなるはずです。

できるようになるためには、教えてもらった問題を自分だけの力でやり直す。家に帰って同じような問題を数題解く。最低でも1日おいて、また同じ問題を解き直す。間違えたらまたやり直す。この一連の繰り返しが必ず必要です。もちろん、これらがスムーズにできる子どもは滅多にいません。やり直しの途中でわからなくなったり、勘違いしたり、あるいはケアレスミスをします。だから、何度もやり直す必要があるのです。

これは子どもにとってとても辛い勉強です。繰り返しの勉強は最初に教えてもらった時のような新鮮さや新しい発見や驚きがありません。わかった(つもりの)問題が解けないので、自分の愚かさに直面しなければなりません。しかも、自分の手と脳を使うという知的なエネルギーも必要です。消耗するし頭が痛くなることもあります。勉強がとても億劫に感じられるときです。だから、多くの子どもはこの一連のやり直しを避けようとします。「先生、もうわかった。だから、やらなくても大丈夫」。こんな声がその代表です。

でも、テストのためには、この辛い作業は避けられません。やらない子どもには、多少無理してもやらせなければなりません。この瞬間、子どもと先生との関係は劇的に変化します。教えてくれたときは天使のように見えた先生も、やり直しを求められたときには鬼や閻魔大王のように映ります。

だから私は講師たちには常々こう言っています。「先生は子どもから好かれる努力はするべき。でも、好かれるだけでは所詮アマチュアレベル。嫌がられる覚悟も持ちなさい。」

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