2003年3月号……『1対1の対応』 塾長/青沼 隆

答えの暗記
“子どもたちの勉強がヘンだ”と感じることが多くなりました。勉強の視野が極端に狭くなり、1つの問題をやっても、その問題に対する答えだけ(答えそのもの)しか頭に入れようとしない子どもが増えてきました。“一を聞いて十を知る”という言葉がありますが、その正反対をイメージしていただけたらよいかと思います。

これが最も顕著に表れるのはテスト勉強のときです。入学試験であれ、学校の定期テストであれ、テスト前には問題演習を必ずやります。このときに、この子どもたちは、設問に対する答えだけを覚えようとします。この辺の様子をうまくお伝えしたいのですが、一番極端な子どもは、答えの記号を覚えて済まそうとします。1番の答えがウ、2番がアという調子です。記述式なら、意味をほとんど理解しないまま、“二酸化炭素”とか“国民主権”という解答の言葉を暗記します。従って、国民主権とはどういうことか、とか、二酸化炭素が発生するのはなぜか、と問われると全く手が出なくなってしまいます。問い方を少し変えただけでも、わからなくなってしまいます。この子どもたちは、問題演習を一生懸命やりますし、くり返しもします。表面的にはものすごく進んでいるように見えます。しかし、設問と解答の暗記が「1対1」で対応してしまっているので、同じパターンの問題しかできません。内容が一緒でも、少し形が変わればもうできません。ですから、例え100題の問題をやっても、101題目でつまづいてしまいます。

誤った勉強法
2~3年前、ある受験生が、「入学試験の過去問題なんかやっても無駄だ。同じ問題なんか絶対出るはずがないのだから………」と言っていたのを思い出します。その当時は、その子どもの本意がわかりませんでした。たぶん、過去問題をやるのが面倒だからこじつけているのだろうくらいに考えていました。しかし、今、振り返ってみますと、案外、本気だったのだと思います。確かに、この子どもが言うように、過去問題そのものは、再度出題されることはありません。ですから、最も出題されない問題の集大成となります。もし、過去問題を、設問と解答を「1対1」で暗記したなら成果が上がるはずはありません。しかし、言うまでもなく、過去問題は「1対1」で暗記するために利用するものではありません。問題の難易度を確認したり、どの範囲が中心に出題されてきたのかを確認したり、設問の作り方を確認したりするために利用するわけです。この当たり前を無視して、ただ、設問と解答を暗記したならまったく話は異なってくるわけです。

塾を始めて20数年になりますが、このような子どもたちが目立ち始めたのはここ数年ではないかと思います。昔の子どもたちにもこのような傾向があったのかもしれませんが、今ほど極端ではなかったと思います。ですから、昔の子どもであった今のご両親さま方は、このような子どもの存在が、例え、わが子であったとしても、よく理解できないのではないかと思いますが如何でしょうか。この「1対1」の勉強法を別な言葉で表現すれば、刹那的な勉強、目先の効率だけを求めた勉強、思考を省略した勉強……となるのですが、どうも言葉としてしっくりしません。いつとはなしに、私たち講師間で「1対1の対応」という言葉を造語して使っているのですが、もちろん、世間に認知された表現ではありません。もっと、良い表現があればその言葉を使おうと考えています。

いずれにいたしましても、この問題の根はかなり深いのではないかと思います。世の中全般が効率を追求し思考全体が刹那的になっていること、子どもたちがわがままになって忍耐力が失われたこと、学力が低下してきていること等などの原因が相互に関連しあっているのではないかと思います。

「1対1」を脱却するため
一見、効率的(どんどんプリントが進むという意味で)に見えるこの勉強は、実は、最も非効率な勉強法です。1つの事がらを完全に理解するのに、数多くの問題演習が必要となります。すべての設問パターンを学ばなければならないのですから、膨大な時間と労力がかかります。私たち教師も、チェック、チェック、チェックに明け暮れることになります。
そんなことをするよりも、その事がらの根本部分を理解・定着した方がはるかに時間も労力もかかりません。ですから、この「1対1」は絶対に止めさせなければなりません。私たち教師は、子どもに「問題をたくさん解きなさい。同じ問題を何回も繰り返しなさい。」と言ってきましたが、対応を改めなければならないのを感じています。こんな反省も踏まえ、最近の授業では、「なぜ、この答えに至ったのか」を子どもに問う指導に改めました。また、試験前に、程度を超えて問題演習プリントを要求する子どもには「待った」をかけることにしました。時代の変化が激しい中、子どもたちも急速に変化しているのを痛感しています。

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