2012年5月号……『関所』 塾長/青沼 隆

子どもたちと接していると毎日数多くの質問を受けます。質問の内容はいろいろです。基本的な理解不足や勘違いもあれば、あれこれこねくり回してわからなくなってしまったものなどさまざまです。

塾の講師をはじめた30数年前は、子どもの質問が1つ1つ新鮮でした。どう答えたらよいものやら、汗を拭きつつ対応したものでした。ただ、さすがに長年、塾の講師をやっていると、「新鮮」と感じるものはほとんどなくなりました。質問の大半はこれまで受けてきたものであり、従って、汗を流す場面は滅多になくなりました。

子ども一人ひとりには個性があります。ただ、塾の勉強に限れば、子どもの質問や理解の仕方には個性がないというのが実感です。よく教育書に、「一人ひとりの個性に応じて指導しなければならない」と書かれています。確かに、コミュニケーションの取り方などは一人ひとりに異なった対応が必要かもしれません。ただ、教える中身となると画一的であっても構わない、いやむしろ画一的であった方が好ましいと感じています。

当然のことですが、塾で指導している勉強には体系があります。国語も算数もどんな教科も、過去の偉人たちが積み上げてきた知識の体系から成り立っています。塾はその体系の一部を、子どもの学年に応じて指導しています。従って、教える中身に、いわゆる教師のインスピレーションなどに左右されるものは何ひとつありません。

子どもは勉強でつまづきます。学校の授業のときかもしれませんし、塾かもしれません。あるいは家庭学習のときかもしれません。いずれにしても、あるとき「わからなく」なり途方に暮れます。子どもにとっては突然のことかもしれません。しかし、それは、客観的に見れば、ある段階から、次の段階に進む過程で起きているに過ぎません。子どもがどこまでわかっていて、次のステップの必要な知識を把握できれば、多くの場合、簡単に解決します。

そう考えますと、教師にとって大切なのは、各教科の各単元の「段階」を把握ということになります。この「段階」とはつまり、子どもがつまづく箇所とも言えます。

具体的には、例えば、中1数学の「正負の計算」は次の「段階」で構成されています。子どもが「わからなく」なるのは、このうちのどこかの「段階」です。従って、教師は予めこの「段階」を把握していれば、子どもの「わからない」に直ちに対処することができます。

①-3+2-5………単純なたし算・ひき算
②(-3)-(+5)………括弧のついたたし算・ひき算
③(-4)×(-3)÷(-6)………かけ算・わり算
④-32×(-3)2 ………指数の問題
⑤(-4)×(+3)-(+6)÷(-2)………四則混合問題

私は以上の「段階」という言葉をふだんは「関所」という言葉に置き換えて使っています。正負の計算では、上記の5つの関所をクリアできればマスターできます。子どもの「わからない」という漠然とした質問が、上記のどの関所に該当しているのかをつかめば、「わからない」は直ちに解決します。非常に単純なことですが、重要なことと認識しています。

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