2002年11月号……『過去問題』 塾長/青沼 隆

入試問題は志望校から受験者へのメッセージと言われています。その学校がどんな資質や能力を持った子どもに入学して欲しいのかが入試問題に込められているからです。現実に多くの学校、特に私立学校ははそれぞれに工夫を凝らした問題を作成しています。
一方で、入試問題は継続性が重視されます。ですから出題形式はあまり変わらないのが通例です。過去数年分の問題を見れば、今年の問題パターンもほぼ予測できます。受験勉強で過去問題が重視される理由はここにあります。

ただ、一方で過去問題は、一度実際に入試で使われた問題です。近年出たものが、翌年にもう一度同じように出ることはまずあり得ません。ですから、過去問題は、「出る見込みのない問題」の集大成ということになります。この考えに従いますと、過去問題は、最も効率の悪い教材ということになります。

このように2つの対立的な考え方がありますが、私自身は「過去問題こそが全て」と信じています。入試であれ、資格試験であれ、およそ試験と名のつくものならば、全ての受験勉強の最終目標は過去問題を解き込むことだと思っています。ただ、これを実践するには「ある前提」が必要です。特に、最近の子どもたちを見ていて強く感じるようになりました。

くり返しになりますが、過去問題は「出ない問題」です。ですから、これを通り一遍に解く、とりわけ、問題と解答・解法を丸暗記するような勉強では翌年の入試の得点につながりません。英語を例にとれば、問題文の単語や熟語の意味や文全体の和訳をしないまま、答さえ合っていればそれでOK、数学なら途中の過程はともかく、答えさえ合っていればOKという勉強法です。こんな勉強法が果たしてマトモかどうかの議論の余地はあります。ただ、実際のところ、学校の定期テストではこれで十分太刀打ちできます。なぜなら、学校のテストでは、教科書やワークなどからほとんど同じよう問題が出題されるからです。むしろ、定期テストだけに焦点を合わせたらこの方が正道かもしれません。何はともあれ、効率性が求められる風潮を反映してか、子どもの勉強法も刹那的になってきているのが実情です。

しかし、入試の過去問題対策ではこんな勉強は通用しません。過去問題対策には3つの要素が必要だと思います。1つ目は、文字通り、問題を解き込むことです。英語なら、答えと関連があるないに限らず、出題されたすべての文章の単語・熟語・文全体の意味と英文法を把握することです。なぜなら、翌年の入試では、同じ単語などを使った別の問題が出題されるかもしれないからです。
数学なら、できなった問題については、似たような問題を別の問題集から探して解き込んでおくことです。2つ目は、「自分の弱点を知る」という問題意識を持って取り組むことです。わかったつもりの単元でも、理解が十分でないために正解できないケースはいくらでもあります。このような問題に遭遇したら、すぐにその単元に立ち戻り、自分の現在位置を確認して不足分を補うことが必要です。このためには、いつも弱点を積極的に発見しようというセンサーを働かせていることが大切です。3つ目は、入試の問題の“形式”を読み取ることです。

例えば、英語なら、リスニングがどういう形式で出題されるか、その配点はどうなっているか、長文はどうか、文法問題はどうか、などです。これと、2番目の弱点を組み合わせれば、合格に必要な学習量と残された時間の配分方法がわかります。

残念ながら、今のこともたちはこの3つのチェック力が弱まっています。そして、年を追う毎にこの傾向が顕著になっています。学力だけではなく、学習実践力の面でも子どもたちの力が低下しています。入試を控えたこの時期、子どもたちは最後の追い込みをかけています。ただ、過去問題1つとってみても、「やり方」によって効果は大きく違ってきます。一方でこの問題の難しさは、単に「やり方」を言葉で教えようとしても限界があることです。
なぜなら、実践するのは本人です。ごまかそうとして形だけを整えようとすれば、いくらでも私たちの目を盗むことができるからです。実際、3つのチェックを実践するのはたいへんです。時間もかかりますし、何よりもくり返しに伴う労力(エネルギー)が求められます。こんな問題を前にして、最近、私は「忍耐力」の重要性を痛切に感じています。

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