2002年9月号……『英文和訳』 塾長/青沼 隆

英語の文章を訳せない中学生・高校生が増えました。子どもたちの頑張りが足りないというより、中学校での英語の指導法(評価も含めて)が大きく変化したのが原因だと思います。お子さまの英語の教科書をご覧になった方はご存じだと思いますが、今の教科書はご両親さま方が使った教科書とは「別物」です。サイズが大きくなった(B5→A4)だけではなく、中身も変わりました。会話文が大半で論説文はほとんどありません。特にこの4月から使われている新しい教科書ではこれが顕著で、主語や述語が省略された慣用的な表現がたくさんあります。これらは、直訳(英語をそのまま日本語に当てはめる手法)してもほとんど意味が通じません。和訳の必然性を感じのは難しいと思います。

授業進め方や定期テストの中身も変わりました。教科書の和訳を宿題として課す教師はほとんどいなくなりました。このため、英語の辞書をまともに使えない子どもも珍しくなくなりました。定期テストも変わりました。英文を和訳する力はほとんど必要ありません。教科書の英文をある程度覚え、学校で配られる「ワーク」(問題集)を一通りやっていれば正答できる問題が大半を占めます。ですから、英語の総合的な実力がなくても、単語や慣用句など断片的な知識さえ詰め込めば、何とかテストを切り抜けることができます。

このような中で、子どもたちに「和訳」をさせることはものすごく困難です。辞書を調べるのは面倒なことですし、単語の意味がわかっても文全体の意味を把握するにはかなりのエネルギーが必要です。しかも、こんな努力をしたところで、学校の成績にはほとんど反映しません。和訳を避けたくなるのは当然です。

こんな子どもたちが、和訳の必要性に直面するのは高校入試です。英語の入試の問題は、今も昔も長文読解で構成されています。この時に、子どもたちははじめて和訳の必要性を実感します。しかし、1~2ヶ月程度の努力では、長文の和訳はできるようになりません。ですから、大半の生徒は、英文の意味がよくわからないまま設問に取り組もうとします。入試問題は記述式ではなく選択式です。また、英文を読まなくても解答できる問題もたくさんあります。一部の上位校を受験する生徒を除き、大半の生徒は和訳をしないまま切り抜けます。(しかも、最近の高校入試は過半数が一般入試を受けずに、「推薦」で高校進学を決めているのが実情です。)

ただ、問題は大学入試です。ここで出題される英文は高校受験の比ではありません。構文は複雑ですし、単語も難解ですし、文章も長くなります。中学時代にさぼってきた子どもは、ここで極めて厳しい現実に直面し、これまでの「ツケ」を払わされることになります(払いきれないで大学受験を断念する人も数多くいます)。
こう考えますと、今の中学生の英語の勉強はかなり問題があります。英語を勉強する目的はいろいろあろうかと思いますが、和訳を避けた勉強法はナンセンスです。しかし、学校の英語では、試験も含め和訳の必要性はほとんどありません。目先の成績に関心を持っている子どもたちに、和訳の必要性を説得するのは至難の技です。当塾でも和訳に力を入れたいと思っています。しかし、辞書を引くなど和訳には時間がかかります。仮に
、これを塾の授業だけで賄おうとすれば、授業時間を今より2~3倍に増やさなければなりません。こんなことは非現実的なので、勢い、宿題にせざるを得ません。しかし、こんな面倒な宿題をキチンとやる子どもは滅多にいません。塾の宿命から子どもの「成績」を無視することもできません。これらが相まって、目先の成績に直結しない和訳にいつまでも関われないのが実情です。

将来の大学受験のために、また、国際化時代を生き抜くために英語は不可欠です。そして、和訳も不可欠です。しかし、現在の状況下では和訳に本格的に取り組むのは困難です。また、ご両親さま方の当塾に期待される内容もさまざまかと思います。つきましては、この問題はそれぞれのご両親さま方にご判断をお任せしたら如何かと考えます。和訳について、当塾で指導を期待される方は、是非、その旨お申し越しいただけたら幸いです。個々の実情を踏まえて進めたいと考えます。

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