2003年12月号……『県立高校訪問記』 塾長/青沼 隆

世の中が大きく変わりつつあるのを感じます。2~3年前まで、県立高校を塾が訪問できるなどとは全く考えられませんでした。学校の様子を知りたいとか、学校を見学させて欲しいとかを申し入れしても、いかにも胡散臭そうな表情で(かつ軽蔑を込めて)、「ウチは塾と話をするつもりはありません」と言下に断られたものでした。ところが、この秋、10校近くの県立高校を訪問して、実際の授業を見学したり、あるいは、校長先生以下担当の先生の話を直接伺う機会に恵まれました。もちろん残念なことに、訪問できた県立高校は全体の中でまだほんの一部です。大部分の県立高校はこちらから申し入れしても、「職員会議で全員の賛同を得なければならない。前例がない。」などの理由で実現できていないのが実情です。しかし、すでに、一部の高校で突破口が開かれたこともあり、来年あたりからはかなりの数の高校訪問が可能になるのではないかと思っています。また、こちらから訪問するだけではなく、市川北高校については、当学習会に教務主任(遠藤先生)がいらっしゃって同校の学校説明会も実現しました。これは、市川北高校にとってもはじめての塾訪問であったそうで、校長・教頭も当学習会の生徒のナマの声を聞けたことに深く感謝していました。

県立高校を訪問してお話を伺いますと、これまで想像もつかなかった実態が明らかになりました。まず、驚きましたのは、県立高校と公立中学校の接触があまりないということです。もちろん、書類のやりとりは行われているようですが、実際に両者が会って公式・非公式なやりとりをする機会はほとんどないようです。これまでは同じ“公務員”ということもあって、いろいろな情報交換が当然なされているものと思い込んでいましたがそうではないようです。ある高校の校長は、「特色化選抜が導入され、入試制度が複雑になってくると中学の先生に頼るのは限界に達した。これからは、生徒・保護者に直接PRする必要があるし、塾の力も借りたい。」とも仰っていました。

第2に驚きましたのが、“授業が成立している”ということです。もちろん、偏差値のレベルの差によって、授業の様子はかなり異なります。例えば、浦安高校の授業では何人かの生徒が後ろの方で私語をしています。寝ている生徒もいます。しかし、授業が妨害されて、やる気のある子が迷惑をしている様子は全く見当たりませんでした。恐らく、一般の中学の授業よりずっと整然と進められているのではないかと思います。5~6年くらい前までは、多くの県立高校(特に偏差値レベルの低い高校)では、授業が成立していなかったのが当たり前だったと言われていました。何人かの高校の先生は、授業の様子は“街の街頭演説だ”と言っていました。先生が街頭演説の話者で、生徒は群衆という意味です。生徒は教室を自由に出入りして私語でも何でもありだったそうです。しかし、少なくても私が見た限りではこんな様子はどの高校でも全く見当たりませんでした。

一般的に県立高校のイメージは“安かろう、悪かろう”ではないかと思います。私自身もこれまで強くそのように信じてきました。しかし、授業の様子そのものは私立高校と差はありません。また、そのことを県立高校自身も、あるいは保護者の方も認識していないように思えます。事実、授業が私立に引けをとらないことを校長先生に伝えましたらひどくいて驚いておられ、また安心されていました。県立高校も私立高校も相互の交流がないために、相手の学校がどんな様子なのかわからないようです。両者の様子を公平な目で比較できるのは、塾の特権であることをはじめて知った次第です。

また、高校間で違いや特色があることもわかりました。これまでは、県立高校の情報がなかったため、“どこも大差ない”と考えてきましたが、これを改める必要があると認識しています。ただ、残念なのは、見学できた高校が一部ですべての高校を知り得たわけではないことです。来年以降、努力を続けたいと考えています。

今回の県立高校訪問を通じて痛感しましたのは、少なくても“安かろう、悪かろう”のイメージは払拭する必要があることです。授業の様子、校長の教育理念などでは決して私立に負けていません。ただ、県立はもっともっと情報を公開していく必要があると思います。最近、ようやく一部の高校がこれに踏み切りましたが、これが大きな動きになれば県立高校に対する世間の認識も変わるのではないかと思います。

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