2002年3月号……『新学習指導要領について』 塾長/青沼 隆

いよいよこの4月から、30%カットされた学習内容の授業が始まります。当学習会がこの問題を取り上げたのが今からちょうど3年前です。その当時は、まだ、学力低下問題が今ほど騒がれていなかったこともあり、関心も高くありませんでした。その後、幾度となく保護者会やこのお知らせでこの問題を取り上げ、また、この夏には新しい教科書が古い教科書とどこがどう違うのか、教科書の実物の展示会も行いました。従って、この問題について改めて申し上げることはないのですが、この間に新たに当塾にご入会いただいた方もたくさんいらっしゃいます。そこで、この機会に改めてこの3割カットの問題について触れてみたいと思います。

まず、結論から先に申しますと、この新しい学習指導要領での勉強は極めて危険だと考えます。特に、算数と数学にそれが言えます。子どもたち一人ひとりの特性や興味関心は異なりますが、多少の無理で済むのなら、3割カットの勉強は避けた方が無難だと思います。まして、現行の学習に問題がないなら、絶対に旧カリキュラム(3割カットをしない従来の学習)で進めべきだと思います。以下、この理由を3点申し上げます。

1.「新カリキュラムの水」を飲んだらもう元に戻れない
言うまでもないことですが、算数・数学は「積み重ね」の学問です。どこかに穴が空いてしまったなら、その先を進めることが極めて困難になります。新カリキュラムの問題の1つはここにあります。例えば、小数の加減乗除の計算について、新学習指導要領では、小数点第一位までしか扱わないことになっています。現行では「0.908+1.29」のような計算を取り扱っていますが、これが「1.2+2.9」で終わってしまうことになります。この結果、新カリキュラムの子どもは、小数第二位以降の複雑な小数計算ができなくなります。よくマスコミは円周率の問題を取り上げますが、「3.14」が「3」になる理由はここにあります。

そして、これは、中学の勉強にもつながっていきます。例えば、現行の教科書には「0.25χ-0.14=0.36」のような問題がありますが、これもなくなり「2.5χ-4.6=0.4」的な計算で終わってしまいます。分数も同様のことが起こり、その結果、中学の計算は小数と分数の計算が大幅にカットにされます。教科書や問題集を見ますと、ほとんどが整数だけの計算に終始します。

これらの結果、子どもたちの総合的な計算力は大幅に落ちます。従って、新カリキュラムで学ぶ限り、ご両親様方と同等な計算力を修得するのは不可能です。もし、新カリキュラムの水を飲んだ子が途中から元に戻ろうとすれば、多大な負担がかかることは間違いありません。

2.大学入試のレベルは落ちない
小学校・中学校が3割カットして、大学入試も含めてすべての学習が3割カットされるなら、それはそれとして整合性があります。しかし、そうはなりません。なぜなら、日本の教育は諸外国と比較しても、現時点ですでに下位ランクにあるからです。もし、大学入試のレベルをさらに下げれば、知的な国際競争力はますます低下します。従って、上位ランクの大学については もうこれ以上レベルを落とすわけにはいきません。最近では、大学入試をもっと厳しくしろという声の方が大きくなっています。

従って、新カリキュラムで学んだ子どもは、小中でカットされた分を高校で取り戻さなければなりません。現時点でも、多くの高校生が勉強についていけずに「フーフー」言っています。これに、小中の不足分がプラスされたら一体どうなるのでしょうか。結論は見えているような気がします。

3.公立と私立の格差など
今年の中学入試は活況を呈したと言われています。もちろん、その理由は学習指導要領の改訂にあります。ほとんどの私立中高は新カリキュラムを導入しないで、旧カリキュラムで進めるとしています。従って、公立と私立の学力格差はさらに広がることは間違いありません。大学の合格実績もさらに広がるだろうと思います。千葉県教育委員会のある責任者も、個人的な見解として、「今後は、千葉高や船橋高といえども大学進学実績は大幅に落ちるだろう」と言っています。

また、もう1つささやかれていることがあります。3割カットの新しいカリキュラムは、数年のうちに廃止され、元に戻されるのではないかということです。学習指導要領は原則として10年毎に改訂されることになっています。しかし、今回の指導要領にはさまざまな批判が集中してます。10年間も維持できない可能性があります。最近の文部科学省の迷走ぶりを見ていますと十分にあり得そうです。もし、そうなれば、被害が及ぶのは、この間に新カリキュラムで学んだ子どもたちです。

以上の通り、新学習指導要領はさまざまな問題を抱えてこの4月から実施に移されます。これまで、何度も主張してきましたとおり、子どもの学習をお上(文部科学省)任せにする時代は終わったと痛感します。子どもの教育は親の自己責任で決めなければならない時代に入りました。日本人は一般的に、お上を信頼してお上に従う国民であるといわれていますが、少なくても教育については危険だと思います。
では、どうすべきか。くり返しになりますが、旧カリキュラムで進めることと、学校の進度にとらわれないで、なるべく速いペースで進めることです。私立中高一貫校では、高2の段階で高3の学習をすべて終えています。大学進学を考えれば、公立中出身者は大きなハンデを負っています。このハンデを解消するには「速いペース」しか方法がありません。お上の言いなりにならずに、子どもたちをもっともっと勉強させるべきと考えます。

トップページに戻る