2003年4月号……『小中学生にとっての大学受験』 塾長/青沼 隆

文部科学省の諮問機関である「大学審議会」の試算によりますと、2009年には大学・短大の志願者と定員がほぼ同じになり、数字の上では、進学希望者は誰でも大学にも入学できる「全入時代」を迎えることになります。2009年は、現在の中学1年生が大学に進学する年です。ですから、それ以降に生まれた子どもは、大学の銘柄さえ選ばなければ、どこかの大学に入学できる計算になります。これがどんなに“劇的”な変化であることは、下表をご覧いただけばご理解いただけると思います。ご両親さま及びその前後の世代においては、大学進学を志望した高校生のうち、概ね2/3程度しか大学進学を果たせませんでした。1/3の高校生は、大学進学の目標を達成できなかったわけです。

大学進学者志望数に対する大学入学者の割合(大学入学率)の推移

1970年度:68%
1980年度:71%
1990年度:63%

当時は、どの大学に進学するかはもちろんですが、大学入試そのものが大きな壁として存在していました。しかし、これが「全入時代」を迎えることによって、大学進学そのものが、もはや「壁」ではなくなる訳です。既に、現在でも、「Fランク」(ランクフリーの意味)と称せられる、願書さえ出せば、ほぼ、全員が合格できる大学も数多くあります。また、入学者が集まらないで経営危機に陥る私立大学も珍しくありません。2009年を待たずとも、誰でも入れる大学が増えることは間違いありません。

このように、競争のほとんどない大学が増える反面、国公立大学の入試は難化していきます。来年度の入試から、センター試験(1次試験に相当)の入試科目が増え、国数英理社の5教科すべてが課せられるようになります。私立大学では、文系学部では英国社、理系学部では英数理の3教科が一般的で、下位大学になるとこの教科はさらに少なくなります。今後、国公立大学と早稲田・慶應などの上位私立大学の入試が難しくなる一方、下位の私立大学の入試が易しくなるという二極化が進んでいくことになると思います。ですから、これまでにように、「大学」という言葉で大学を一括りにできない時代が来るのは間違いありません。同じ「大学」であっても、その内容は全く別ものになるだろうと予測されています。

こう考えますと、小学生や中学生にとっては、「将来、大学に進学したい」という志望動機は、ほとんど意味を持たなくなるのではないかと思います。一昔前なら、「将来、大学に……」という目標は、それ自体が目標となり得ました。しかし、銘柄さえ選ばなければ、誰でも大学に進学にできる時代になろうとしています。ですから、漠然と「将来、大学に……」と言ったところで何の目標になり得ません。また、ただ大学を卒業して、卒業証書が幅を利かす時代をはとうに終わっています。

子どもたちの目標設定が難しくなりました。昔なら、一言で済んだのがそれでは済まされなくなりました。社会全体に共通する何らかの目標がある時代も終わりました。一人ひとりが目標を設定して、自己責任でそれを追及しなければななりません。ご両親さまの役割がますます大きくなっているのを実感します。同時に、私たち大人の責任も大きくなっているのを痛感します。いろいろな意味で難しい時代になりました。

トップページに戻る