2010年1月号……『大人と子ども』 塾長/青沼 隆

塾の教師をやっていますと、時折、「子どもの成績を手っ取り早く上げてくれませんか。」というお願いをされることがあります。このご両親さまのお気持ちは、わからないでもありませんが、実は、あまりいい感じがするものではありません。この辺りの心情を上手く言葉にするのは難しいのですが、わが子の成長を功利的にお考えになっている部分に引っかかりがあるのかもしれません。

ただ、それはそれとして、成績を手っ取り早く上げる方法は、「ある」とも言えるし「ない」とも言えます。塾の教師は成績を上げる「プロ」です。本来なら、「あります。お任せ下さい!」と断言すべきなのでしょう。長年、塾の教師をやって来て、ちょっと情けないというか、残念なことの1つはここにあります。

成績を上げる「方法」そのものは、確かにあります。その方法を子どもたちに教えることもできるし、現に、日々の授業の中で実践しています。要素としてはいろいろありますが、煎じ詰めていけば、「ノートの使い方」と「問題集の使い方」に尽きると思っています。この方法さえマスターできれば、成績は必ず上がります。だから、どんな子どもも、必ず、成績を上げることはできます。

しかし、問題はここからです。方法を教えたらといって、子どもがそれをマスターして実践できるとは限りません。「わかる」と「できる」ことの間には、数千キロに及ぶ距離があるからです。

一般的に、大人は子どもにくらべて、いろいろな面で目的意識がはっきりしています。従って、目的への道筋が明確になれば、多少の困難があっても、そこに至る行動をとることができます。大人は何かを成し遂げようと決意した瞬間に、その目的に向かって行動を開始することができます。しかし子どもは違います。多くの子どもは目的意識を明確に持っていません。ですから、目的と行動との間には大きなギャップが生じます。つまり、わかっても、できないということが起こりやすいのです。

さらに問題を複雑にするのは、多くのご両親さまは、このこと、つまり、大人と子どもの違いを必ずしも理解されていないケースがあることです。『星の王子さま』ではありませんが、大人はかつて自分も子どもだったことを忘れがちです。大人として持っている目的意識を無意識のうちにわが子に反映させて、わが子の意識の低さや、目的に向かう行動レベルの低さを嘆かれることがよくあるように思えます。

ノートの取り方も問題集の使い方も、理屈そのものは決して難しくありません。しかし、日々、これを実践するには、それなりの困難があります。自制心や忍耐力も当然必要になります。そして、この困難から逃げようと思えば、いくらでも言い訳ができます。「部活が忙しい」「友だち・先生から別のやり方を習った」「みんなこんなことをやっていない」………等などは、そのほんの一例です。

伸栄学習会では「わかる」までは100%責任を持って指導できます。しかし、「できる」までは100%指導しきれていません。これが、ちょっと情けない、残念な現実です。さらにこの精度を上げるように精進を続ける所存です。でも、「できる」の100%達成は、ひょっとしたら、見果てぬ夢に終わるかもしれません………

本年もよろしくお願いします。

トップページに戻る