2007年10月号……『世の中』 塾長/青沼 隆

子どもたちと話をしていて驚かされるのは、彼ら彼女らが「世の中」のことをほとんど知らないということです。「何を今さら」と言われそうですが、この傾向は年を追って強まっているような気がします。ですから、ご両親さま方が、中学生や高校生だったときよりも、今の子どもはもっと世の中を知らない、あるいは、世の中に関心がなくなっているのではないかと思います。

ちなみに、お子さまに、「世の中にある仕事を50書いてごらん」と問うてみてください。こんなの常識以前とお感じかもしれません。しかし、たぶん、書けないと思います。ちなみに、高校生にこの問いを発することがありますが、多くの子どもは書けません。インターネットやテレビなどを通じて情報はふんだんに提供されています。しかし、だからといって、子どもたちは現実社会のことを知っているわけではありません。

一方で、子どもたちは、「将来の目標を持たなければならない」というプレッシャーを受けています。そして、多くの場合、子どもたちは、この「目標」を「仕事」という言葉に置きかえて理解しています。「私は将来の目標(やりたい仕事)が決まっていない。だから、今、どう頑張って良いのかわからない(だから頑張らない)」という言葉を塾の中でしばしば耳にします。自分の怠け心を正当化しているような気もします。でもそればかりではなさそうで、何とも言えない気持ちにさせられます。

そもそも勉強の目的は「将来の仕事」のためだけでしょうか。自分の生活に彩りを与えるも大きな目的の1つです。実際問題として、大人たちだって、自分の仕事と何ら係わりのない勉強にうつつを抜かしています。それに将来のことなんて、どうなるのかまったくわかりません。変化してしまう可能性のある1点の「目標」に向かって勉強するのはリスクが大きすぎます。

しかも、そもそも、子どもは世の中のことを知りません。たまたまテレビのドラマで見た仕事、知り合いのお兄さんやお姉さんから聞いた仕事が、将来の「目標」になることはよくあります。もちろん、それはそれで良いことかもしれません。でも、それが、「将来の目標」と言えるのかどうか、まして、その「目標」がないことに負い目を感じるのは少しヘンではないかと感じています。

「子どもはどこまで世の中のことを知らなければならないのか」、という問いに正解があるとは思えません。大人たちは、皆、違った答えを用意しそうな気がします。ですから、職業50の知識も必要ないかもしれません。しかし、それはそれとしても、現実社会に生きている子どもたちの多くが、現実社会に対してあまりにもリアリティを持っていないのも事実です。

日本の社会では、伝統的に、親は子どもに仕事の話をしないということになっているようです。私自身も自分の親から仕事の話を聞かされた記憶はありません。でも、親はもっと、子どもに仕事の話をしたらどうかなと思います。テレビのドラマや映画なんかよりも、子どもにとっては、よほどスリリングでエキサイティングに感じられるのではないか思います。

来週1週間、塾はお休みさせていただきます。お時間があれば、ご両親さまの物語をお子さまにお聞かせになられたらと思います。

トップページに戻る