2002年6月号……『いまさら訊けない大学入試の基本常識』 塾長/青沼 隆

先日、当塾が所属している研究会で表題の勉強会を企画しました。最近、大学入試が複雑になっているので、一度、その基本を整理しようということで、大手出版社の大学入試雑誌の編集長に講師をお願いしました。
タイトルにあるとおり、この勉強会は大学受験を専門にしている人より、むしろ、そこから距離のある教育関係者を対象としたものでした。ところが、驚いたことに、当日、高校の校長や予備校の経営者などが多数見えました。親しい私立高校の校長に、「なぜ、先生のような大学入試の専門家がこんな会合に出るのですか」と聞いたところ、「何を言っているだ。本当なら校長の私だけではなく、進路指導の担当者を全員出席させたかったんだ。ただ、授業が詰まっていたので一人で出たのだ。」、そして、「大学入試のことなんか、私たちが知っているのはほんの一部だ。全体像なんかわかりゃしないよ。」と言っていました。

会の冒頭、当の講師も、「大学入試では何をもって“常識”というか定義が難しい。実は、私もよくわからないから、時間があるたびにいろいろな大学を訪問して情報を集めてい  る。」と話していました。確かに、中学入試や高校入試なら、200校程度のことを知っていれば十分です。しかし、大学入試はそうはいきません。対象が地域限定ではなく全国に広がりますし、1つの大学には複数の学部があります。各学部は、指定校推薦、一般公募、AO、センター利用、一般入試(多くの場合複数回実施され科目も各回で異なる)などさまざまな入試を行っています。ですから、中学入試や高校入試の数百倍の複雑さとなります。これらを網羅的に把握することは人間業ではありません。そう考えますと、この会合に高校や予備校のTOPが出席していたのは当然なのかもしれません。
以下、当日の話を箇条書きで報告します。

・私立大学→国公立大学への風向きは、景気低迷を背景に変わりそうもない。特に、  地方で顕著で、私立高校の校長は、早稲田や慶應よりも地元の国立大学に何人合格 させた方が重要だと言っている。(ちなみに偏差値は早慶の方が上)

・2004年入試(現在の高2)から国公立の大半の大学は学力低下問題を背景に入試科目数を増やして、5教科7科目とすることを決定している。。その結果、現高3は、万一、浪人すると入試制度変更の影響を受けて不利になる。従って、浪人を避けて国公立の安全志向と私立併願が増える。この結果、今年度の私立大学の入試は厳しくなりそう。
5教科7科目とは
(理系)………数学(2科目)・理科(2科目)・英語・国語・社会
(文系)………数学(2科目)・社会(2科目)・英語・国語・理科
※現状(現高3の入試まで)は5教科6科目以下の大学が大半

・センター入試の問題は、国公立のエリート戦略を背景に難しくなっていく。

・私立大学の中には“誰でも入れる”大学が増えている。ただ、ここ2~3年、首都圏の私立大学に限っては応募者は増えていて、今年は上記の影響もあって厳しくなりそう。

・ただ、長期的に見ると、私立大学は二極化が進行する。「日東駒専」あたりが分岐になり、「大東亜帝国」以下は誰でも入れる大学になりそう。
首都圏の私立大学ランキング
●難関グループ(偏差値66~72) 早大・慶大・上智大
●準難関グループ(偏差値60~65) 明治・青山・立教・中央・法政
頭文字(アルファベット)をとって“MARCH(マーチ)”と称される
●中堅グループ(偏差値55~59) 日大・東洋・駒沢・専修
頭文字をとって“日東駒専(ニットウコマセン)”と称される
●中堅下位グループ(偏差値50~54)大東文化・東海・亜細亜・帝京・国士舘 頭文字をとって“大東亜帝国(ダイトウアテイコク)”と称される

・私大文系入試では、今後も英語が決め手。英語が出来る生徒は決定的に有利。

・私立大学の入試ではAO入試の導入で様相が一転した。AO入試とは、本来、大学の事務局が受験生の適性や意欲を面接などを通じて審査する入試。ただ、高校の推薦書はいらないし受験期間の定めもない。現実的には一部の大学を除き“青田刈りも含め何でもあり”の入試になっている。

・これからの大学入試のキーワードは「小論文」。国公立の後期は現状でもそうだが、これからは前期日程でも課すところが増えそう。

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