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 高校生の次男を連れて三越劇場で演劇を見た。


 演目は「紙屋治兵衛」。


 パンフレットには、“近松門左衛門「心中天網島」より”とある。心中天網島には以前より興味があった。


 演劇には詳しくないが、1つ1つの動作が決まっていて、とても美しい舞台だった。そして、何よりもストーリーが素晴らしかった。紙屋治兵衛という放蕩息子が、運命の糸に操られて多額の借金を負い、そして、人殺し、最後は遊女と心中に至る。


 人間の運命は自分で決めることができない、自分の生き方は自分が決めることができない、「あなたは悪い星のもとに生まれた」という、妻のおさんのセリフにグッとくるものがあった。


 劇が終わり、次男に「素晴らしかっただろう」と感想を求めた。


 ところが…………


 「何で、治兵衛は人殺しなんかするの。なんで、死ななければいけないの。一緒に死んだ小春って何もの?メチャクチャな話で現実味なんかまるでなかった。」とさんざん酷評。


 確かに、言われてみれば、そうも言えなくないなが。でもねぇ……


 親子の断絶を実感した日だった。

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